僧帽筋は、筋肉の中でも9位の大きさ(筋体積)を持つ大きな筋肉です。
肩こりの原因になったり、
肩関節の運動を障害したりと、様々な影響を及ぼす僧帽筋ですが、
「僧帽筋麻痺」という言葉には聞き馴染みがないのではないでしょうか？
僧帽筋は麻痺だけでなく、様々な場面で機能不全を起こしやすい筋肉でもあります。
きちんと理解しておくことで、肩関節のリハビリもスムーズに進めやすくなるでしょう。
僧帽筋麻痺とは
その多くは、頭頚部の悪性腫瘍に対する根治的頸部郭清術後における
副神経麻痺により発症するとされています。
副神経は頸部の筋肉の一部に分布している運動性の神経です。
副神経は第11脳神経ともよばれ、迷走神経の付属神経という考えから名づけられたものです。
脊髄部分は胸鎖乳突筋と僧帽筋に分布しています。
僧帽筋の解剖学
僧帽筋は、
- 外後頭隆起
- 第1~7頸椎棘突起
- 第1～12胸椎棘突起
を起始とし、
- 肩甲骨の肩甲棘上縁
- 肩峰鎖骨近位1/3
に停止します。
支配神経は、副神経とC2~4です。
僧帽筋は、
上部・中部・下部の3つの線維に分けられ、それぞれが異なった作用を持っています。
- 僧帽筋上部・・・肩甲骨の挙上、上方回旋に作用。
- 僧帽筋中部・・・肩甲骨の内転に作用。
- 僧帽筋下部・・・肩甲骨の下制（引き下げ）、上方回旋に作用。
僧帽筋全体が作用すると、肩甲骨の内転・上方回旋に働きます。
僧帽筋麻痺がおこるとどうなる
僧帽筋麻痺による代表的な症状は翼状肩甲です。
（日本整形外科学会より抜粋）
翼状肩甲とは、上肢の挙上時に肩甲骨の内側が浮き上がってみえる状態のことです。
僧帽筋が肩甲骨の内側を引き寄せる作用を失い、
上肢運動時に肩甲骨を安定させておくことができなくなるためです。
また、僧帽筋麻痺がおこると、肩甲上腕リズムの乱れや肩甲骨内方傾斜角が増大し、それに伴い上腕骨は相対的水平外転位となります。
これにより、大結節は通常の軌跡から大きく異なる経路を通過するため、
肩峰と大結節のインピンジメントを引き起こしてしまいます。
前鋸筋麻痺での翼状肩甲
翼状肩甲が起こる原因として有名なのは、前鋸筋麻痺ですよね。
前鋸筋麻痺の場合ですと肩関節屈曲時に、
僧帽筋麻痺の場合では肩関節外転時に著明となります。
また、僧帽筋が障害される部位によっても浮き上がり方にも違いが生じます。
僧帽筋と前鋸筋の共同作用
肩甲骨の上方回旋運動は、僧帽筋と前鋸筋が協調的に働くことで引き起こされます。
僧帽筋は肩甲骨を内転させる作用を持ち、
前鋸筋は肩甲骨の外転作用を持ちます。
かつ、僧帽筋の停止は肩甲骨の上部、前鋸筋の停止は肩甲骨の下角にあるため、
これらが共同して働くことで、肩甲骨の上方回旋は生まれるのです。
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