リハビリ

ペースメーカー植込み患者さんのリハビリテーションにおけるリスク管理

ペースメーカー植込み患者さんのリハビリテーションを担当することは少なくないと思います。

電気関係がNGである、

意外にリスク管理が思いつかない

という意見を聞くことがあります。

電気を使わなければ何をしても良い、

というものではありませんが、

過度に慎重になる必要はないと筆者は考えています。

ただし、前提としてペースメーカーがなぜ植込まれているのかを理解し、

どのような設定になっているのかがわかっていればの話です。

  • ペースメーカー植込み患者さんのリスク管理が分からない
  • ペースメーカーの設定が意味不明
  • そもそも、なぜペースメーカーを植込む必要があるの?

上記の疑問がある方はこの記事を読み進めてみて下さい。

すべてを解説しようとすると非常に長文となりますが、

まずはペースメーカーの大枠を理解しましょう。

メモ

※一般的には「ペースメーカー」と呼ばれていますが正式には「ペースメーカ」と言います。

日本不整脈心電学会のプログラムを見ても「ペースメーカ」となっています。

http://new.jhrs.or.jp/device/contents06.html

ペースメーカー植込みの適応疾患は?

ある臓器が本来の役割を果たせなくなった場合に

代替手段として機械を用いることはよくあります。

換気、酸素化ができない⇒人工呼吸器

腎臓の役割を果たせない⇒人工透析(一部の機能の代替)

膵臓がインスリンを出せない⇒インスリン注射

などなど。

では、ペースメーカーはどういった位置づけでしょうか?

心臓が動かない⇒ペースメーカー?

違いますよね、これは強いて言うならLVADや心移植です。

心臓の収縮が弱い⇒ペースメーカー?

これも違いますね、ただし心室再同期療法はこれに一部該当すると考えられます。

脈が遅い⇒ペースメーカー

これが正解です。

すごくシンプルですよね?

心臓の力が弱いわけでも動かないわけでもないですが、脈が遅いんです。

つまり、徐脈がペースメーカーの適応です。

では、徐脈になる疾患は何でしょうか?

実は、

  • 房室ブロック
  • 洞不全症候群(徐脈性心房細動を含む)

の2つしか基本的にはありません。

脈を遅くすることは薬物療法で可能ですが、

徐脈を改善することは難しいうえに

失神や心不全などの危険な症状を伴うことがあります。

脈が遅いことだけが問題であれば、ペースメーカを植込めば解決するわけですね。

ペースメーカーの設定からリスク管理を考える

ここが鬼門です、設定の理解。

人工呼吸器もそうですが、ここが理解できていないと意味が分からないと思います。

AAI

VVI

DDD

など、設定には複数の種類がありますが、とりあえず今日はこれだけ覚えて下さい。

DDDです。

ペースメーカーの設定は基本的に3つのアルファベット

1文字目:刺激する部位

2文字目:感知する部位

3文字目:感知したらどうするか

ですが、この辺りがややこしいですよね。

A:心房の事

V:心室の事

I:刺激しないということ

D:Dual,両方ということ

例えば、VVI。

2文字目がVなので、心室を感知して心室を刺激するという設定です。

最後がIになっていますので、心室で感知したら何もしないということです。

ペースメーカー植込み患者さんは常に自己脈が出ないという訳ではないので、

自分の脈が心室まで伝わることもあります。

その時は心室をペーシングする必要がないですよね?

むしろ有害になりかねないので、

心室で自己脈を感知したらペーシングはしない、

ということです。

「VVI60」

と書いてあります、60というのは心拍数です。

心拍数が60ということは1秒に1回刺激をするということ。

つまり、

「1秒待っても心室に電気の刺激がなければペースメーカーが刺激を送る」

という設定になります。

ペースメーカーのDDDは万能戦士

まず前提として、ペースメーカーは徐脈の治療ですから、

基本的に一定のリズムで心臓を電気で刺激して脈を打つようにするのが仕事です。

DDDの場合、刺激する部位、感知する部位ともに両方です。

  • 心房で自己脈を感知⇒心房には何もしない(AS)
  • 心房で自己脈感知せず⇒心房を刺激(AP)
  • 心室で自己脈を感知⇒心室には何もしない(VS)
  • 心室で自己脈を感知せず⇒心室を刺激(VP)

心房で2通り、心室で2通りなので、合計で4パターンしかありません。

〇AS-VS

ペースメーカーは何もしていない

〇AS-VP

心房は自己脈が出たけど心室に伝わっていないもしくは伝わるのが遅いため心室はペーシング

〇AP-VS

心房は自己脈が出ないもしくは遅いためペーシング、心室には伝わったので何もしない

〇AP-VP

心房も心室も自己脈が出ないもしくは遅いためペーシング

この4通りですね。

これさえ知っておけばペースメーカはだいたいいけると思います。

ペースメーカー植込み患者さんのリスク管理

では、上記の設定を理解してリスク管理を考えます。

ペースメーカーがきちんと働いていれば、安静時には問題はないはずです。

機械なので、エラーを起こすことがありますので、

まずはエラーを起こさずにきちんと刺激ができているかを確認します。

  • ペーシングフェイラー
  • センシングフェイラー
  • オーバーセンシング
  • アンダーセンシング

などがないかを確認します、

安静時の事なのでここでは詳細は割愛しますね。

リハビリテーション時というのは運動時のことです。

運動時もこれらの設定がきちんと作動しているかは大事なことですが、

ずっとこのままでは1つ問題があります。

心拍数が上がらない可能性があるんです。

人間が運動すれば必ず心拍数が上がって心拍出量を維持します。

ペースメーカー植込み患者さんの場合はこれがうまくできない可能性があるんです。

「DDDR」

のように、実は4つ目の文字がある場合があります。

このRがレートレスポンス機能と言い、

運動に追随して心拍数の設定を上げてくれる大変ありがたい機能です。

加速度や胸郭の動きなどで運動を判断していると聞きます、すごいですよね。

これがうまく作動すれば安静時60だった心拍数が、80や90に上昇します。

ペースメーカー植込み患者さんは循環器疾患ですから

基本心臓リハビリテーションの対象となることが多いと思います。

安全な運動負荷の範囲となると安静時の心拍数+20~30ですから、それくらい上がってくれれば十分です。

もしこのレートレスポンス機能がついていない場合や、

VVIのように基本的に心拍数が上がらない設定の場合は心拍数の増加は期待できません。

そうなるとおのずと運動耐用能も規定されてくることがわかりますね。

一般的なリスク管理同様、危険な不整脈への注意も必要ですが、

それだけではなく心拍数の変動が生理的に起こらないということが

最も重要なリスク管理の視点であると筆者は考えています。

ペースメーカー植込み患者さんのリスク管理まとめ

まずは機械の事を良く知りましょう。

そして、機械がきちんと作動しているか確認します。

そのうえで、

運動時にどのような反応をするのか、

患者さんとペースメーカーそれぞれの反応を確認して運動負荷の設定をしましょう。

機械関係は見方につけると非常に強力な仲間になりますが、

きちんと勉強しないとただ怖いだけになります。

我々はリハビリテーションの専門家である前に医療の専門家です。

それを忘れずに医療・医学の知識を学ぶ姿勢を忘れないようにしましょう。

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