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閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行の治療

閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療と言うと

血管内治療、いわゆるカテーテル治療が一般的と思われるかもしれません。

しかし、実際にはすべて血管内治療を行うわけではなく、

薬物療法と運動療法が重要な位置づけとなります。

  • 閉塞性動脈硬化症(ASO)による間欠性跛行の治療を知りたい
  • 閉塞性動脈硬化症(ASO)は血管内治療をすればいいと思っている

上記に当てはまる方はこの記事を最後まで読んでみて下さい。

結論から言うと、血管内治療よりも運動療法や薬物療法が重要な位置づけと言えます。

閉塞性動脈硬化症(ASO)の評価と診断

閉塞性動脈硬化症(ASO)は

足関節/上腕動脈血圧比(ABI:Ankle Brachial Pressure Index)

で評価することが一般的です。

これは上腕と足首の2か所の血圧を測定するだけなので、

非侵襲的で簡便に評価できるのが大きなメリットです。

通常であれば、臥位の状態で上腕と足首の血圧はほとんど同じですので、

ABIはおおよそ1.0となります。

閉塞性動脈硬化症(ASO)はほぼ下肢に症状が出ます。

つまり、足首の方の血圧が低くなります。

すると、ABIは1.0未満の数字となり、

0.9未満の場合は閉塞(ASO)と判断することが一般的です。

0.9~1.0はいわゆる境界型で、間欠性跛行などの症状の有無により評価されます。

糖尿病は動脈硬化を合併することが多く、

閉塞性動脈硬化症(ASO)のリスクファクターにもあげられています。

ガイドラインでも推奨レベルは高くないものの、

糖尿病患者さんにはABIのフォローを行うことが必要とされています。

私見ではありますが、

閉塞性動脈硬化症(ASO)はそれ自体の問題より合併する脳梗塞や心筋梗塞が大きな問題です。

つまり、閉塞性動脈硬化症(ASO)を早期に発見することで

脳梗塞や心筋梗塞を予防することが

その患者さんのADLやQOLを維持する役割を持つと考えています。

閉塞性動脈硬化症(ASO)そのもので亡くなったり

著しくADLやQOLが低下する症例は限られますが、

合併する可能性のある疾患をきちんと予測し予防することが重要ではないでしょうか?

閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療|第一選択は血管内治療?

上記のように、

評価と診断は比較的簡単にできるのがメリットである

閉塞性動脈硬化症(ASO)ですが、問題はその治療方法です。

冒頭でも述べましたが、

血管が狭くなっているんだからカテーテルで血管を広げたらいいじゃないか?

そう思っていませんか?

実臨床はそれほど簡単なものではなく、

カテーテルによる治療が優先されているわけではありません。

特に閉塞性動脈硬化症(ASO)で多い膝下病変に関しては、

重症虚血肢が適応とされています。

理由は再狭窄率の高さです。

ガイドライン1)にも

“膝下動脈領域の病変に対する EVT におい て,PTA の再狭窄率は 3 か月後で約 70%”

との記載があり、

その再狭窄率の高さからバイパス術の方が優先される傾向にあります。

つまり、重症虚血肢になるまでは血管内治療の適応とは言えず、

運動療法と薬物療法が第一選択となります。

閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療|薬物療法と運動療法

薬物療法は主に

  • リスクファクターに対する治療
  • 間欠性跛行に対する治療

に分けることができます。

閉塞性動脈硬化症(ASO)のリスクファクターに対する薬物療法

糖尿病

糖尿病は最も有病率の高い疾患であり、

動脈硬化と密接に関係していることから治療は不可欠です。

運動療法ももちろん必要ですし、薬物療法による血糖の適正化が必要となります。

使用する薬剤については肥満の合併など、

糖尿病に合併するものによって使い分けられます。

薬剤の種類よりもHbA1cなどの適正化をしっかり行う必要があります。

高血圧

高血圧も合併頻度の高い疾患です。

降圧目標は 140/90 mmHg 未満とされており、

ASO 以外の脳心血管疾患がない患者では可能な限り

130/80 mmHg を目指すとされています。

降圧薬の種類に関してこだわるよりしっかり血圧を下げることが有効です。

こちらも併存する心疾患などに応じて使い分けることになると思われます。

β遮断薬は以前は逆に血流不全を招くとされていましたが、

現在は使用することは問題ないとされています。

脂質異常症

基本的にはスタチンを利用して

HDLは40以上、LDLは120未満、TGは150未満を目標とします。

スタチンだけでは効果が乏しく目標値に達しない場合は

フィブラート系薬やEPA製剤の利用が検討されます。

こちらに関してももちろん運動による効果が期待できます。

つまり、すべてのリスクファクターの管理において運動療法が有効であると考えられるわけです。

閉塞性動脈硬化症(ASO)の間欠性跛行に対する運動療法

ガイドラインでも

閉塞性動脈硬化症(ASO)による間欠性跛行には運動療法が推奨されています。

運動の種類は基本的に歩行です。

歩行を、痛くて歩けなくなるまで歩いては休んで、

これを30-60分繰り返すことになります。

対象はFontaine分類でⅠ~Ⅱ度の方

Ⅲ度以上となると運動療法の実施は困難となります。

ただ歩くだけ、というのは一見簡単そうですが、

痛くなるまで歩くことを繰り返す

というのは患者さんにとってはつらいものです。

いかに継続させるかというのが大きな課題と言えるでしょう。

運動療法に類似した効果を期待できる方法としては

神経筋電気刺激

が考えられます。

こちらの文献2)でも一定の効果が報告されており、今後の研究が期待されるところです。

痛くなくて継続しやすい治療法ができれば、

患者さんにとっては非常に有益と考えられますからね。

閉塞性動脈硬化症の間欠性跛行に対する治療まとめ

血管がつまればカテーテルで広げればいい、

そんな簡単なものではないことがご理解頂けたかと思います。

  • 閉塞性動脈硬化症(ASO)で多い膝下病変に対するカテーテル治療は再狭窄率も高く第一選択ではない
  • 薬物療法と運動療法での間欠性跛行の改善効果が報告されている

課題はまだまだあります、

例えば歩けない方に対してどのように治療を提供していくのか。

歩けないので間欠性跛行の症状は出ませんが、

閉塞性動脈硬化症(ASO)自体が存在する場合、

重症虚血肢にならないための治療をどう提供していくのか?

理学療法士・作業療法士として考えていく必要があると思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

【参考・引用文献】

  • 末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン (2015 年改訂版)
  • 田中伸弥他:閉塞性動脈硬化症患者に対するホームエクササイズとしての神経筋電気刺激の実施可能性および有用性の検討 - 無作為化比較試験による検討 -.理学療法学 42(2): 152-153, 2015.
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