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低栄養を評価するには?リハ栄養のスクリーニングついて

リハビリテーションにおいて低栄養が問題視されることは多いのではないでしょうか?

栄養状態が悪いとリハビリの効果が出にくい

これはイメージとしては分かりやすいものですが、

実際に目の前の患者さんが低栄養なのかどうかをあなたはどのようにして評価していますか?

  • 痩せている
  • 血清アルブミン値が低い
  • ご飯を食べていない

実は低栄養というのはかなり漠然とした表現であり、

その評価方法も統一されていない現状があります。

栄養状態の評価は、明確な単独の指標が存在しないため、複数の項目を組み合わせて多角的に行う必要がある1)

とされています。

ここでは低栄養の定義から、主要なスクリーニングツールについてご紹介します。

低栄養とは?|低栄養の定義

まず第一に分かっておかないといけないことは低栄養の定義です。

主には小児や高齢者の分野で低栄養の問題が良く出てきますが、実は用語や定義があいまいです。

たとえば小児では,主に発展途上国において全世界で1億6,000万人が成長停止,5,000万人が低体重に陥っている1)

とされています。

低栄養とは、

エネルギーやたんぱく質などの栄養素の摂取が必要量に対して不足している状態であり、

これにより体重減少や除脂肪体重(おもに骨格筋量)の減少、身体や精神機能の低下、ひいては臨床転帰への悪影響がもたらされる状態である2)

と定義されています。

定義はやや曖昧ですが、次に診断基準を見ていきましょう。

低栄養のスクリーニングと診断基準

定義が曖昧である以上、診断基準もはっきりしたものが示されていませんでした。

様々な評価ツールがありますが、

昨今、「GLIM Criteria」という新しい診断基準が作成され注目を集めています。

GLIM criteria とは

「世界規模での低栄養の診断を作ろう」

という考えのもと、

世界各国の栄養関連学会における代表者が一致団結して到達した初めての低栄養診断の世界基準3)

です。

まだまだこれからデータがでてくると思いますが、

世界基準のゴールデンスタンダードになることが期待されています。

GLIM Criteria以外でも一般的な栄養管理では、まずスクリーニングが行われます。

スクリーニングはいわゆる間引きのようなものであり、

簡便さと正確さが求められます。

スクリーニングとして利用されているものには以下のようなものが存在します。

このように、栄養のスクリーニングツールはたくさんあります。

栄養の評価と言うのは難しいので、複数のツールを使うことも推奨されています。

ここでは代表的な指標をいくつか見ておきましょう。

栄養のスクリーニングツール①主観的包括的評価(SGA)

(鞍田三貴他:心不全患者における主観的包括的評価 (SGA) の短期予後予測の妥当性.心臓リハビリテーション 26(1): 136-146, 2020.より引用)

SGAの良さは検査機器を必要としないこと。

入院患者さんほぼ100%に対して適応することが可能です。

スクリーニングという視点から言うと利便性に長けた評価項目と言えますが、

最終的な判断が

  • 『栄養状態良好』
  • 『中等度の栄養不良』
  • 『高度の栄養不良』

というやや客観性に欠く面があります。

そこで、日本静脈経腸栄養学会では以下のようなアセスメントを提示しています。

一番下のJudgementのところを見て下さい。

A~Dの4段階に分類していると同時に具体的な判断基準が記されています。

SGAを利用した栄養評価について、

鞍田ら4)は心不全患者の短期予後評価のためにSGAが有用であることを示しています。

この研究で何より注目すべきことは、

SGAは100%の心不全患者さんに適応できたということ。

CONUTやGNRIは欠損値が多く、

4割の患者さんが評価できなかったとされています。

栄養のスクリーニングツール②MNA-SF

基本的に65歳以上の高齢者対象の評価ツールです。

こちらはネット上に公開されています。

https://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdfより引用)

SGAとの比較研究は色々あって、SGAより栄養状態良好とすることが少ないことが知られています。

久保田ら5)によると、

整形外科病棟入院患者さんにおいて

MNA-SFで低栄養リスクのある症例は92.9%、

SGAにおいては58.6%

MNA-SFの判定ではより多くの患者が低栄養リスク有り

と判定される結果となったとされています。

SGAより多くの患者さんを拾うことができると考えられます。

体重測定ができずBMIが分からない場合は下腿周径を用いますが、

31㎝を基準にしており、これは日本人には大きすぎる

と議論されているようです。

所要時間はSGAより有意に少なかった5)と報告されており、

利便性においても優れています。

また、末廣らの研究によると、

自宅からの入院患者と施設からの入院患者で

入院時の栄養状態にも有意な差があることが示されています。

有意差はもちろんですが、

平均すると自宅からの患者であっても

ほとんどがMNA-SFでは低栄養と判断されるのも驚くべきことです。

施設においてはよりしっかりとした栄養管理とともに

栄養療法が必要となると考えられます。

栄養のスクリーニングツール③CONUT

CONUT(controlling nutritional status)は、

血液・生化学データが必要なため、おもに医療施設で使用されています。

このように、血液検査をしていれば判断可能なので非常に簡単です。

アルブミンだけでは栄養の評価指標として不適切であることは広く認知され始めています。

もしアルブミンだけで判断するならせめてCONUTを利用すると良いと思います。

ちなみに、アルブミンは炎症など疾患の影響を強く受けることが問題視されています。

栄養の指標と言うより病態の指標に近いです。

このように、

エネルギー摂取量との相関はなく、CRPとの負の相関があり生命予後とも相関がある8)

と報告されています。

松本ら9)によると、

大腿骨近位部骨折患者を栄養補助食品を摂取する群と対象群で比較すると、栄養補助食品摂取群で有意にCONUT Scoreが改善した

と報告されています。

また、結果的にFIMの改善率も栄養療法群で有意に高かったと報告されており、

CONUT Scoreが栄養療法の効果を反映している可能性を報告しています。

栄養のスクリーニングツール④GNRI:Geriatric nutritional risk index

GNRI(geriatric nutritional risk index)の対象は65歳以上の高齢者で、

合併症の発症率や死亡率を予測する指標で、2005 年に発表されました7)

GNRI=14.89×血清アルブミン(g/dL)+41.7×BMI/22

とアルブミン値とBMIだけで簡単に計算が可能です。

高齢HFpEF患者さんを対象とした研究において、

GNRI<92でADLが低下し死亡率が高い10)

ことが報告されています。

【リハビリテーション栄養】低栄養の評価まとめ

低栄養と言うのは厳格に基準があるわけではなく、様々な要因によって影響されます。

そのため、複数の評価指標を組み合わせ、

きちんとスクリーニングを行い

栄養療法の必要性を考えることが求められます。

近年の高齢化に伴い、

低栄養患者は増加傾向にあり、

より栄養療法の必要性が高まっていることは臨床でも感じていることと思います。

今回ご紹介したもの以外にも指標はあります。

あなたの施設において適切な評価指標を検討して頂くきっかけになりますと幸いです。

【参考・引用文献】

  • 西岡心大: 低栄養の分類と診断基準.臨床栄養 130(6): 724-730, 2017.
  • 長谷川陽子:術前栄養管理のポイントは? 低栄養すぎると手術できないの?.ニュートリションケア 13(2): 117-120, 2020.
  • 相川駿:呼吸器疾患のリハビリテーションで知っておくべき16の評価 Assessment 15 栄養指標.みんなの呼吸器Respica 18(5): 624-626, 2020.
  • 鞍田三貴他:心不全患者における主観的包括的評価 (SGA) の短期予後予測の妥当性.心臓リハビリテーション 26(1): 136-146, 2020.
  • 久保田明子他:急性期整形外科病棟におけるMNA-SFおよびSGAの特徴と有用性についての検討.日本病態栄養学会誌 16(2): 199-208, 2013.
  • 末廣剛敏他:高齢者施設からの緊急入院患者の低栄養の現状.臨牀と研究 90(9): 1237-1240, 2013.
  • 門脇敦子:2 低栄養の判断基準.ニュートリションケア 13(8): 715-720, 2020.
  • 田中佑佳:褥瘡患者において血清アルブミン値は栄養状態を表す良い指標か?.日本病態栄養学会誌 14(1): 9-15, 2011.
  • 松本卓二:大腿骨近位部骨折治療におけるBCAA, ビタミンDを含んだ栄養補助食品を用いたリハビリテーション栄養の栄養学的および身体学的指標の改善効果.骨折 41(3): 922-924, 2019.
  • 衣笠良治他: 栄養療法.日本臨牀 77(増刊号1): 585-590, 2019.

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