肩の痛みや動かしづらさは、四十肩・五十肩や腱板損傷など、年齢や生活習慣に伴って多くの方に起こります。
こうした症状の改善には、肩関節の仕組みとローテーターカフ(回旋筋腱板)と呼ばれる筋肉の働きを理解することが大切です。
ここでは、患者さんやご家族にも分かりやすい形で、肩のリハビリの基礎をご紹介します。
肩関節はなぜ複雑なのか?
肩関節は大きく分けて
肩甲上腕関節(いわゆる「肩の関節」部分)
肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の動き)
の2つで構成されています。
肩甲上腕関節では、ローテーターカフ(インナーマッスル)と三角筋・大胸筋(アウターマッスル)の協調が大切です。
一方、肩甲胸郭関節では、僧帽筋や前鋸筋の働きによる肩甲骨の安定性が必要になります。
つまり、肩の動きは「関節」と「肩甲骨の動き」の両方が揃ってこそスムーズになるのです。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは

ローテーターカフ(回旋筋腱板)は、
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
によって構成されます。
これらの筋肉は、肩の回旋(内旋・外旋)や安定性を保つ役割を担い、上腕骨の骨頭を肩甲骨の関節の中心に引きつける「押さえ役」として働きます。
例えば、肩を横に上げるとき、三角筋が力強く持ち上げますが、その土台を作っているのが棘上筋です。
もしローテーターカフがうまく働かないと、骨が関節からずれてしまい、痛みや可動域制限の原因になります。
肩関節リハビリにおけるフォースカップルの重要性
肩の運動では、筋肉が単独で働くのではなく、「フォースカップル(力のつり合い)」が大切です。
例えば、
棘上筋が骨頭を押さえ、三角筋が持ち上げる → スムーズな外転
棘下筋と肩甲下筋がバランスを取り、前後から骨頭を安定させる
このバランスが崩れると、インピンジメント症候群(骨と筋肉がぶつかって痛む状態)や動作制限が起こりやすくなります。
棘上筋と三角筋の関係| 肩関節のリハビリ
外転運動では棘上筋が支点を作り、その上に三角筋の力が働きます。
もし棘上筋が損傷していると、三角筋の力で骨頭が上方に突き上げられ、関節を痛めてしまいます。
逆に三角筋が麻痺した場合は、棘上筋だけでは力が弱く、肩を外転できません。
このように両者の協調はリハビリ上で非常に重要です。
棘上筋のエクササイズ
empty canとfull can
棘上筋を鍛える方法として有名なのが
empty can(親指を下にして外転)
full can(親指を上にして外転)
ですが、empty canは肩の挟み込み(インピンジメント)を起こしやすいため、症状がある場合は注意が必要です。
研究報告に基づく推奨肢位
ペンダント肢位での外旋
うつ伏せでの外転+外旋
これらは三角筋の活動を抑えつつ、棘上筋を効率的に鍛えられると報告されています。
(参考:日本理学療法士学会 英文誌 2011)
肩甲下筋の役割とリハビリ
肩甲下筋は4筋の中でも最大の断面積を持ち、前方から強力に支えます。
そのため、後方の棘上筋・棘下筋・小円筋との前後バランスを整える役割があります。
肩甲下筋の機能低下があると、外旋制限や肩の不安定性が増し、四十肩・五十肩の回復を妨げることがあります。
四十肩・五十肩と肩すくめ現象
四十肩や五十肩の患者さんに多く見られるのが、肩を上げようとすると肩そのものではなく首や肩甲骨をすくめるようにして代償する動き(シュラグサイン)です。
これはローテーターカフが十分に働かないため、別の筋肉で肩を上げようとしてしまう現象です。
研究では癒着性関節包炎の患者の約95%に観察されたとされています。
その結果、肩甲骨の動きが過剰になり、痛みや動作の不自然さが残ります。
そのため、肩甲骨の動きの改善と並行して、ローテーターカフの再教育が必要です。
まとめ|肩の痛み改善のためにローテーターカフを鍛えよう
肩は複雑な構造のため、不安定になりやすい
ローテーターカフは肩を安定させる中心的な筋肉群
棘上筋と三角筋のバランス、肩甲下筋との前後バランスが重要
適切なエクササイズによって、肩の痛み改善や再発予防が可能
肩関節は多くの筋肉が協力しあって動く複雑な関節です。
その中でもローテーターカフは、肩の安定性とスムーズな運動を生み出すための要です。
肩の痛みや動かしにくさを放置すると、動かさない期間が長くなり筋力が低下してしまい、さらに回復に時間がかかります。
そのため、早めのリハビリ開始と、専門家による正しい運動指導が重要です。
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