理学療法士の視点から、回復に必要な知識と実践法をお伝えします
人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)は、変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死症などによって股関節の機能が著しく低下した患者さんに対して行われる外科的治療です。
手術により関節の痛みが大きく軽減され、日常生活の質が大幅に向上することが期待されますが、術後のリハビリテーションもとても重要になってきます。
本コラムでは、理学療法士として患者さまに伝えたいTHA後リハビリの目的、注意点、日常生活の工夫についてご紹介いたします。
1.THA後リハビリの目的とは
THA後のリハビリは様々ありますし、症状によって異なりますが
代表的なものを記載していきます。
- 関節可動域の確保:術後、関節可動域の拡大を図ったり、スムーズに曲げ伸ばしができるようにします。
- 疼痛の緩和:股関節周囲の疼痛をケアしていきます。
筋力回復:手術前から低下していた股関節周囲の筋力(特に中殿筋や大腿四頭筋)を強化します。
日常生活動作(ADL)の自立:歩行、階段昇降、椅子への立ち座りなどの基本動作を安全に行えるようにします。
脱臼予防:股関節の動かし方によって、脱臼することもありますのでそういった危険な動作を取らないように指導します。
(しゃがみこみ動作などが代表的なものです。)
2.リハビリの一般的な経過と流れ
術後の回復は個人差がありますが、以下が一般的なスケジュールです。
術後1~3日目
疼痛の管理を行いながら、ベッド上の体位変換や端座位、立位保持などを行います。
→この段階から、脱臼予防姿勢の指導が始まります。術後4日~2週間
歩行器や平行棒を使いながら歩行訓練を開始します。
トイレ動作や入浴動作、階段昇降動作などの応用的な動作も順に進めていきます。退院後(術後2週~3か月)
ご自宅での生活に戻る中で、再脱臼予防と筋力強化を継続します。
訪問リハや外来リハを併用することもあります。3か月以降
日常生活に支障がなくなる方が多く、散歩や軽い運動を再開できるようになります。
3.特に注意すべき「脱臼」
THA後の脱臼は、股関節の動かし方によっては起こり得ます。
特に術後3か月は注意が必要です。
以下の動きは避けましょう:
足を内側にひねる(内旋)
股関節を深く曲げる(90度以上の屈曲)
足をクロスさせる(内転)
実際の動作で言えば、しゃがみ込み動作がリスクといわれています。
例えば「床の物を拾う」「和式トイレを使う」「低い椅子から立ち上がる」などですね。
生活動作の中に潜むリスクを知り、安全な動き方を意識することが重要です。
4.生活で意識したいポイント
日常生活の中で実践いただきたいポイントを以下に整理いたします。
椅子やベッドの高さを調整する
しゃがみ込む動作は脱臼リスクが高いため、椅子やベッドは股関節を曲げて90度より下にしないほうが安全です。靴は履きやすいものを選ぶ
靴下を履く・靴ひもを結ぶといった動作は股関節を深く曲げることに繋がるため、回復するまでは避けるのが無難です。和式生活は避け、洋式生活へ
畳に座る、床に寝るなどの和式スタイルは脱臼リスクが高いため、退院後の生活スタイルの見直しが必要です。
5.人工股関節とうまく付き合っていくために
次の点を意識しましょう:
適正な体重の維持
バランスの取れた筋力(特に体幹と中殿筋)
日常的な歩行や軽運動の継続
不安があればかかりつけ医やリハビリの先生に相談
人工股関節にされる方の多くは、手術されるまでに痛みを我慢しながら生活されておられ
股関節周りだけでなく腰やお尻の筋力が落ちています。
また膝など他の関節に痛みがある場合もありますので、
適切な運動やリハビリを継続的に行うほうが良いです。
どこの筋肉を鍛えたらよいのか?
どんなリハビリが効果的なのか?
など疑問に思われることも少なくないと思いますので、
もしご不安なことや、生活の中で困っていることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。